obakenaneko.cocolog-nifty.com > G・M・W保管庫『純粋戦闘部門』

悪怒VS志郎 決戦 志郎サイド

悪怒VS志郎 決戦 志郎サイド

 悪怒は志郎を見つけるや否や、破裂する大気の咆哮と共に突撃する
 そのスピードは最早、超音速の砲弾と化していた

 志郎は巨砲で迎撃するが、その砲弾が悪怒に当たることはなかった
 その間にも音速に数倍する超々高速の突撃が大気の壁を突き破りつつ、二人の距離を縮める
 志郎は動かない。回避を諦めたかのように、ひたすら砲撃を続ける
 
 この時、悪怒は勝利を確信した
 恐らく相手は高火力の砲撃で近づく前に撃ち落すつもりだったのだろう
 だがそのような砲撃が自分に当たるわけがない
 何よりも咄嗟に回避できない重装備で正面から対峙した時点で愚策以上のなにものでもなかった

「・・・もらった!!」

 悪怒は相手を一刀の元に斬り捨てるべく、防御フィールドを解除する
 その瞬間、志郎の重装備の各部が展開する

「・・・!?」

 その時、悪怒は悟った。今までの迎撃はブラフであったこと。回避できなくて止まっていたのではなく、予めこの瞬間を待ち構えるために立ち止まっていたということ
 即ち自分は“まっすぐ来るよう”に仕向けられたということ

 悪怒は相手が誰よりも罠を張り巡らせることが得意であったことを思い出す

 その時、悪怒は見届けた。必殺の期を掴んだ志郎の凄烈なる笑み。それが言葉よりなお雄弁に語っていた。『かかったな』と・・・
 展開した装備は強烈な閃光と共に弾け飛ぶ。それと同時に超硬タングステン鋼芯を抱えた志郎が前面に突撃してきた
 
 これこそが志郎の秘策だった
 悪怒の防御フィールドは攻撃時以外は常に展開されている
 逆を言えば攻撃をする瞬間、防御フィールドはなくなるということだ
 これを逆手に取って、防御フィールドが解除された瞬間にカウンターを仕掛ける作戦に出た
  
 今までにない重装備は相手に機動力を見誤らせるためのブラフであり、左右に弾幕を張って悪怒を正面に釘付けさせるための囮だった
 更にパージの勢いで前面に超高速で突撃するためのブースターの役割も兼ねていた
 
 志郎は悪怒の今までの戦闘データとガルガンチュアの間合いを徹底的に研究して最適なタイミングを算出すると、あとはひたすらタイミングに合うように訓練をしていたのだ
 
 考え抜いた完璧な作戦に思われたが致命的なミスがあった
 志郎は悪怒という男を過小評価していたのだ

 この程度の閃光と爆音で怯むような悪怒ではない。なんの躊躇いもなしにガンガンチュアを振り下ろす
 
「(ちっ・・・!)」

 志郎は毒づきつつ、悪怒へと突進する
 斬撃は円運動だが打突は直線。自分の体が致命傷に至る前に鋼芯が悪怒を貫くと判断したからだ
 
 互いの攻撃が迫り、やがて――――
 ガルガンチュアが志郎の体を斬り裂くのと、超硬タングステン鋼芯が悪怒の体を貫くのは同時だった
 両者共に地に伏し、観測メカのみが結果を判定したのだった・・・

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「・・・立てるか」

 先に起き上がったのは志郎のほうだった
 その姿は大破したも同然だったが何事もないかのように悪怒に手を差し伸べていた

「なんで、そんなにピンピンしているんだ?」

「この体は痛覚がなくてね。頭さえ無事なら動くことは可能だ
とはいえ、立っているのでやっとなんだが」

「・・・トドメをささないのか?」

 その一言に志郎はやれやれと頭を抱えた

「私のことを殺人狂とでも思っていないか? 
身内に危害を加える奴でもないのに何故、殺す必要がある」

 ふと、志郎は彼方を見据えるとその場を立ち去ろうとした

「どうやらあんたのお迎えが来たようだ。私はこの場にいると疑われそうだから立ち去るとするか
あんたも身内をこんな薄汚い狩猟者と馴れ合わせたくはないだろう?」

 自嘲気味に呟くと志郎はそのまま去っていったのであった