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悪怒vs廃人 決戦 廃人サイド

悪怒vs廃人 決戦 廃人サイド

 試合が開始されてからすでに20分。俺は完全に守り以外の何もさせてもらえていない。
 刀以外の装備が無い俺は基本的に己の持ちうる力以上のものは出せない。
 防御力は綿100%発汗性や着心地は最高クラスで、反応速度はそれなりだろうが、速度と言う点においては最も遅いクラスといっていい。
 対する悪怒は速度一級品、防御力に難はあるとはいえ俺とは比べるのもおこがましい。攻撃力なんぞは図る意味はない。当たれば終わり。

「これは、勝てる要素はほぼゼロ、だな」

 苦笑しながら口をついたぼやきはしっかりと悪怒にも通じていたらしい。

「ほぼ、って言うところが自信ありげだな」

「こういうのは強がりって言ってくれ」

 こんな場所で漫才もする気はないのだが、口から出てくるものはとめられない。
 そんなことをしている際にも悪怒の手にしたハンドガンが火を噴いて俺に襲い掛かってくる。
 当たるものは切り飛ばし、それ以外のものは最小限の動きで掠めるにとどめさせる。
 そして、交差法で刀を一閃。しかし、それは軽く装甲の表面を削るに留まる。

「ったく、ふざけた装甲しやがって」

 踏み込みが後一歩届かない。

「いい加減降参したらどうだ?攻撃も届かずよけるだけではいずれやられるぞ?」

「相手の装備が凄すぎて降参、なんてできねぇよ。荒刃流はいかなる場合でもそれを砕き、切り裂いて進むのが身上でね。
 人が作ったものであるならば、必ず壊せるさ」

 天雲を握りなおす。今回は相手の速度などを考慮し、紅雪は置いてきてある。やはり片手では速度でも精度でも劣る。
 今回必要なのは薄紙一枚を真ん中から2枚に切り分けるほどの精度と、速度。それだけがおそらく勝機を掴む鍵だ。
 俺は腰を落として刀を体の横につける。
 悪怒は木々の隙間を器用に縫いながら的確な射撃を行ってくる。一定の距離から積極的に近寄らないのはこちらの近接戦闘力を警戒してのことだろう。
 確かにあの速度ではまともにやれば近付くことは不可能だ。しかし、一つだけ俺に見出せた相手の隙間。そこに漬け込むことさえ出来れば。

「さて、これ以上は集中力も怪しくなるしな、行かせて貰う!」

 初めて俺から動く。木々を縫う蛇のように動きつつ悪怒との距離を詰める。
 それを見て、逆方向への加速をかけようと動く悪怒。

(ここっ!)

 その瞬間、俺は全身の力を一点に集中させて限界以上の速度を引き出す。
 荒刃流歩法 <神足>
 相手の死角へともぐりこみ、行く手をふさぐ。たった数歩の差。逆噴射をかける瞬間の動きの停滞、それが俺の見出した勝機。

「荒刃流 秘奥乃壱式変化 <砕鬼(くだき)>!」

 右手を逆手に持ち、左手で柄頭を握る。そして、刃の鍔元を相手にぶつける瞬間に、右の肘を峰へと叩きつける。
 “斬る”のではなく“砕く”ことに重きを置いた秘奥の変化。衝撃に弾き飛ばされ、崖へと衝突する悪怒。

「くそ、いたちの最後っ屁ってか」

 肩を押さえつつ呻く。そこには一発の弾痕。
 神足を発動する瞬間に放たれた一撃が直撃したものだ。アレに移る瞬間は全ての動作は移動へと注がれる。
 その隙を狙われたわけだ。

「そろそろ、潮時……なのかもな」

 大きく息をつき、木にもたれかかりながら俺は試合終了の合図を聞くのだった。